KORNです。Yチェアについて、誰も言わないことを言いたいと思います。
家具インテリア業界は今、知名度が二極化していると私は考えています。
まずは、「無印良品」「ニトリ」などの企業の名前。そして企業名が知名度でありブランディングとなっていること。
次に、過去のデザイナーが作り出した名作の「リプロダクト商品」
有名どころだと、「イームズデザインの家具」それらを手がける「Vitra」や「Carl Hansen」といったブランドなど。
Yチェアは後者です。
まず、インテリアショップの通販サイトは、Yチェアを売りたいので、「良いこと」しか書きません。一脚の単価10万程しますし、そりゃ売りたいですよね。
ただし、ちょっと待って。
家具、とりわけ体に合わせる必要がある「椅子」は冷静に座り心地が体に合っているか確かめよう。
一脚10万する椅子は、ランクとしては一生ものと考えても良いです。長く大切に使い、修理しながら次世代に受け継ぐこともできます。
Yチェアとは【ウンチク】
Yチェアそのものの知られている情報ですが、一応載せておきます。
デザイナー:ハンス・J・ウェグナー
製造:カール・ハンセン(デンマーク) 製作年:1950年
背もたれの「Y」が特徴的で、背から肘にかけての曲線は「どこから見ても美しい」
曲木の美しさがここまで表れている海外デザインの椅子では最高峰だろう。
Yチェアと呼ばれているが、欧米では「ウィッシュボーンチェア」と呼ばれている。ウィッシュボーンとは鳥の胸肉の前にある二股の骨で、欧米では食後にこの骨を二人で願いを込めて引っ張り、長い方をとれた方が願いが叶うという言い伝えがあるという言い伝えがある。
座面はクッションでも板座でもなく、紙紐(ペーパーコード)この紙紐がデザインに拍車をかけ「ナチュラル感」が極まっている。北欧インテリア好きには最適な椅子ですね。
みんな大好きブランドもの
Yチェアがなぜブランド化しているのかを考察してみる
デザイナーズ家具の知名度が高く、ミッドセンチュリー(1950年〜)世代の家具は著作権も切れており、近年リプロダクトが行われるようになった。
正規リプロダクトで製造しているメーカーもあるが、特に「イームズ」チェアなんかは通販で粗悪な海外製造品が安価で手に入る。
雑誌やドラマの撮影で出てくるあのデザイナー家具が安価で手に入る!ということもあり、市場に広く浸透していった。
次に、工務店やハウスメーカーがこぞってモデルルームに展示していること。
300円程度で買える住宅情報雑誌におしゃれなモデルハウスの室内写真いっぱいありますよね。必ずと言っていいほど、Yチェアが出てきます。知名度がどんどん上がっていきますね。
そしてIKEAを皮切りに北欧インテリアブーム襲来
北欧家具=IKEA、おしゃれ、カラフルなインテリア、デザイナー
という図式も上がっている人も多いでしょう。結構誤解されているけれども、IKEAは北欧企業であって北欧家具ではない。けれど、この話は長くなり脱線してしまうので別の機会に。
Yチェアの起源は中国椅子
椅子の起源は4つとされている。【近代椅子四大潮流】
- 明式家具(15〜16世紀)
※リンクは明式家具の圏椅(クァン・イ)のミニチュア
- ウィンザー・チェア
- シェーカー・チェア
- トーネット
デザイナーのハンス・J・ウェグナーはこの中で、「明式家具」に影響を受けてデザインを行い、そのデザインの中でもっとも大衆性を持ったのがYチェア。
この圏椅は一説によれば、中国のお坊さんが経典を読むために使われた椅子で、そのために肘掛けがついていたとか。他にも官吏や貴人が公的な場で使われていたという椅子が原型といわれている。
Yチェアの座り心地について
なぜウンチクを前置きしたかというと、要するに椅子には歴史があるという情報をお伝えしたかったからです。
原型となる四種の椅子があり、そこから年数を重ねて発展し、バウハウスが出来たことによりデザインが発展し、多くのデザイナーが生まれ、多くのデザイナーズ家具が生まれた。
そしてYチェアの話に一度戻しますが、まず座ってみてください。
座ったことがない方は、展示のあるお店に行ってみてください。
座った方は大体こう言います。
「あー、座り心地、やっぱりいいですね。」と
ほぅ
・・・。
???
何と比べて言っていますか?
まさか自宅にあるニ○リのチェアじゃないですよね?
楽天の通販で買った粗悪な一脚9千円以下の海外製造品じゃないですよね?
何が言いたいのかと言うと、
Yチェアはそこまで座り心地は良くないです。
CARL HANSEN & SON(カールハンセン&サン)のYチェア「であっても」です。
※Amazonにも実はYチェアの非正規リプロダクトありましたがこれは座ったことないです。
座り心地が悪いとする根拠
- 背もたれのアタリが痛い(腰のY部分は良い)
- シート高が45cmは日本人にはやや高い
- ペーパーコードのクッション性の悪さ
- 膝裏から指四本分の位置、太ももの裏が座面前部分を圧迫する
これだけ細い曲げ木背もたれですから、体への当たりは良くないです。
ちなみに家具は、部位が細ければ細いほど「美しい」のです。
細ければ細いほど、「作るのが難しい」「耐久性の確保に職人技が必要」だったりします。
Yチェアはこの細くてさらに曲線美。とにかく「デザインが美しい」椅子であり、評価され続けています。美しいのですが、、
北欧文化は靴を履いている前提なのと、体格が平均で日本人より大柄です。シート高はその為の45cm。座面の別売りクッションまでつけたら更に座面位置が高くなりますね。
座面高さ43cmが別注できるようですが、こちらは受注納期の模様。
日本人向けは43cmでしょう。(身長160~170cm前後は座面高40cmくらいが本当は良い)
なによりペーパーコードの座面はそこまで心地よくない。
なぜこの座面なのか。デザインなのか?と私は最初思いましたが、椅子は進化の過程で色々な素材が使われていました。
最初は木の組み合わせ。座面は板座。
そして「ペーパーコード」だったり、ベルトの編み込み座面だったりと昔の人は工夫を凝らしてクッション性を追求していた。
プラスチックが登場して座面にくぼみをつけ、本体がしなるような「パントンチェア」が生まれたり、人間工学が組み込まれ2度傾斜がついたり。
産業革命で「ウレタン」が登場してからは座面のクッション性は大きく進化。
国産の飛騨家具の「日進木工」や「柏木工」、「KITANI」など日本の職人ブランドは人知れず進化を続け、より座り心地の良い椅子は生まれている。
上記のキタニの「IE-01」などはYチェアと同価格帯だが、座り心地は大きく違う。それは当然で、1950年のチェアより現在の最新チェアの方が改良され良いに決まっているのだ。
それでも人気なYチェア
これは家具業界に問題があると思うのですが、日本には現在も多くの家具メーカーがあるのに、未だ人気があるのは「1950年代(ミッドセンチュリー)デザイナー家具」である。
より魅力的なデザインを生み出せるデザイナーが後発されなかったことや、巨匠の岩倉榮利のような存在がいたのに、海外製の安物家具に一般の知名度が移っていったことを指を咥えているしか出来なかったことだろう。
そしてYチェアがここまで支持されるのには理由がある。
- 日本人は木が好き
- 北欧人は「日本からデザインを学んでいた」
- デザイナー家具の椅子で木製の有名な椅子はYチェアだけ
日本の国土の3分の2は「森林」です。そして木造建築、神社仏閣、全て木の文化。日本は木が豊富にあるから木が家庭内にも身近だった。
北欧文化は日本の焼物や機織り、着物の文化などからデザインを学んでいたという書籍もあり、そこから発展しているのだから日本人が受け入れられたのは至極当然であった。
極めつけはみんな大好きデザイナーズ家具。
イームズチェアや
パントンチェアや、ヤコブセンのエッグチェアなど。
「○○チェア」と固有名称で伝わるもので、木製のダイニングに使えるような知名度抜群チェアって他には本当にないんですよ。
以上、Yチェアを知名度で買う前に、一度座り心地を確かめてから座ってください。と言いたいのでした。
デザインだけで家具を買うと、長く使えません。結局、体に合わない、使っていて疲れる。というものであればその椅子はただの置物、コレクションになってしまうでしょう。
体には合わない。それでもこのデザインを一生眺めていたい。という方で、足の長さが合わない人は「足カット」をしてくれるインテリアショップや木材加工屋さんを見つけましょう。